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Acroricnus ambulator ambulator (Smith, 1874) キアシオナガトガリヒメバチ
昨年の秋、神社の石碑に彫られた文字の窪みに泥巣を見つけました。徳利状の育房が3つ(a-c)集まっています(泥巣全体の横幅は約35mm)。その場で泥巣を暴いてみると、貯食物は鱗翅目の幼虫でした。育房bから採集した繭を持ち帰り、切り開くと白い前蛹が入っていました。室内で休眠越冬した前蛹はやがて蛹になり、そして4月末にようやく成虫が羽化してきました。しかし出てきたのはドロバチではなくヒメバチの一種♀でした。
残念ながら3個の育房から成虫を得たのはこの一匹だけですので、寄主が何だったのか確証はありません。育房aは蝿に寄生されており、育房cは発掘作業の際に蛹を傷つけてしまいました。
以前ヒゲおやじさんのBBSにて相談したところ、泥巣の形状や大きさからスズバチではないかと教えて頂きました。(キボシトックリバチの泥巣にしては大き過ぎるそうです。)
問題の育房bは一番最後に作られたようですが、入り口が閉じられていません。スズバチは複数の育房が完成すると寄生対策として(?)全体を泥で厚保塗りする習性があるらしいので、この泥巣は何らかの理由で♀が途中で営巣を中断したケースと考えられるそうです。案の定、無防備な育房bはヒメバチに寄生されていたことが分かりました。
(Acroricnus ambulator ambulator (Smith, 1874) キアシオナガトガリヒメバチで間違いないと思います。詳しくは
http://cse.naro.affrc.go.jp/konishi/mokuroku/acroricn.html
をご覧下さい。 by こにし様)
ここに参考文献として載っていた「キボシトツクリバチとその寄生昆蟲の生態」(桝田1941)という古い文献をPDFで読んでとても勉強になりました。
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003378704
おかげでキアシオナガトガリヒメバチに辿り着けました。この文献によるとキアシオナガトガリヒメバチ(旧名キアシオナガヒメバチ)の寄主としてクロバネドロバチ、キボシトックリバチと並んでスズバチも挙げられていて一安心しました。2010年 山形県・里山の麓/撮影者:しぐま様